音楽のリズムは、2ビート,3ビート,4ビート,8ビート等と、単純な構造の繰り返しを意味します。
楽譜では、拍子(beat time)として、1拍(beat)の音符(note)の長さと1小節(bar)あたりの拍数(count of beats)を最初に記します。この拍子は実際的な組み合わせとして、複合拍子(compound time)や混合拍子(odd meter)を含め、約20通り余り(?)出来ますが、リズムとしての基本構造は、2ビート,3ビート,4ビートの単純拍子(simple time)となります
例えば、6/8 timeは2ビートです。1拍の中に8分音符が3つある2ビートです
準結晶構造のリズムは、様々な言い方が出来ます、――
2ビートと3ビートの複合リズムと言えればいいのですが、音楽で言う複合拍子の様に単純なユニットを繰り返す訳ではありません。
f(x) = cos(2 * PI * x) + cos(2 * PI * x / r) とすれば(一次元)準結晶構造の(リズム)周期を示す事になります。但し r は黄金比で、r = (1 + Sqr(5)) / 2
(三次元)物質の原子配列に倣えば、準結晶は(長距離)秩序があります。アモルファスにはありませんが結晶にもあります。秩序があるという点で両者は同様です。数学的には、音楽で使われているリズムは結晶構造です。では、準結晶構造のリズムはどの様なものでしょうか。
この比較の良いメタファーと思われる対比が植物の進化にみられます
ゲーテプランツェンと言われる植物があります(左画像)。これは俗称で、ゲーテが研究していた植物だからそう言われているだけで、ベンケイソウという名のとても原始的な植物です。ゲーテが研究していた株の子孫を、ゲーテの孫から貰った人がいて、わたしもその御裾分けに預かりました。実際に育ててみると、その形態や繁殖方法の原始的で粗野なビヘイビアーに驚かされます。わたし達が、例えば花屋さんで、よく見かける多くの植物はずっと洗練されています
どの様な植物か概要を記すと、葉のキョシに自らのコピ−を生み出します。つまり単性で自己増殖する訳です。全ての茎が幹から水平に一定の十字方向のみに張り出し、上から見ると葉が重なって見えます。とてもお莫迦な植物です。この構造を支配する法的(?)オペレータ(modulus operator)は「2」です
多くの(進化した)現代植物は、より複雑な形態を有しています。茎は幹を廻る対数螺旋上はフィボナッチ数列比のポイントから張り出します(右図)。つまり黄金比です。上から見ると,否どこから見ても,葉はカオティックに分散して見えます。お利口な植物たちです。準結晶構造(quasi-crystalline structure)をしている訳です
ポイントを列記すると、
・採光効率
・構造的に安定的(スタビライズド)
・強度(モ−メントの拡散)
・一定体積の有効利用(情報密度の高度化)
全て黄金比を採用した植物の方が有利な構造なのです
植物も進化と共に採用するオペレーターとしての「数」が単純なものでは無くなっているのです。そして、現代的に採用されているのが黄金比なのです
準結晶構造は、1982年にダニエル・シェヒトマン(Daniel Shechtman)によって、AL-Mnの電子線回析により発見され、シェヒトマンは2011年のノーベル化学賞を授賞しています。左図は、Al-Pd-Mn合金の準結晶原子配列
数学的には、1974年にロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)の考案による二次元準周期構造(Penrose Tiling)があり、12〜13世紀のレオナルド・フィボナッチ(Leonardo Filius Bonacci)によるフィボナッチ数列は一次元準周期構造です
右図はふたつ共にペンローズタイリング
特徴を記す為の通例となる比較対象は結晶とアモルファスです。原子配列形態で比較する訳です。結晶及び準結晶は(長距離)秩序があり、アモルファスにはありません。
結晶と準結晶は、回転対称性が異なり、結晶は2,3,4,6回(180,120,90,60度数)の対称性があり、準結晶は5回対称性のみで、黄金比に満ちた構造になっています
準結晶を幾何学的に分類すると、三次元準結晶は、正二十面体準結晶のみです。二次元準結晶には、正十角形準結晶,正八角形準結晶,正十二角形準結晶などがあります
余談ですが、Stephen Collinsによる
Bob - Penrose Tiling Generator and Explorerというペンローズタイリングを描けるWindowsアプリケーションはとても面白いです
f(x) = cos(2 * PI * x) + cos(2 * PI * x / r) によって一次元準結晶構造のリズム周期を示せると記しました。但し r は黄金比で、r = (1 + Sqr(5)) / 2
この r を2や3にすると一次元結晶構造を示す事が出来ます。そしてそれはそのまま音楽のリズムとしての2拍子と3拍子になります。実際的な音だしには、ふたつの異なる音長乃至音調を組み合わせて表現します。三角関数を使う必要は無く、二次元格子を使って簡単に計算する事が出来ます。
また、r に無理数を使う事で、音楽には採用されていない奇妙なリズムを発声させる事が出来ます
これがこのソフトウエアの根幹となる機能です