右図は、プロタイプの断面模式図。
以降、各部位は右図に示す名称で説明する
燃焼のプロセスを箇条書きする
・アルコール燃料をOpen Chamberへ注入
・アルコール燃料は底部のSlitを通じてPressure Chamberへも浸透し各々で気化する
・Open Chamberで気化したアルコールに着火する
・Top, Partitionから炎の熱が伝わりアルコール燃料の温度が上昇し気化が促進される
・Pressure Chamberの圧力が上がりOutlet Holeから気化アルコールの噴出する勢いが強くなり点火される
・持続的に燃焼する
・底部のSlitよりもアルコール水位が下がるとPressure Chamberの圧力が低下しOutlet Holeの噴出炎は勢いを失う。この時点で燃料残量は僅かとなっている
上記より、製作の要点は次の二つ
・炎の熱をアルコール燃料に伝え易くする
・意図したOutlet Holeを除きPressure Chamberの密閉性を確保する
炎の熱を伝えるのは、TopとPartitionである。
TopとBottomの合わせ方は、Topを内側へ、Bottomを外側にした方が熱伝導で有利になる。
Top上部の開口のサイズをどうするかは難しい。小さくすると最初に着火するのが困難になるが、大きくするとその分だけ炎で炙られる部位が小さくなり熱伝導で不利になる。また、この開口部から立ち上がる炎は、可能な限り小さくして、Outlet Holeからの噴出炎を目立たせた方が面白い。それに、センターの炎は酸素供給が少なく燃焼(熱)効率が悪い筈だ。この辺りのサイズ決めは、手探りでやってみるしかない
Pressure Chamberの密閉性については、TopとPartitionの接合で完璧に密閉する事、TopとBottomの接合も同様、更に、Partitionを長方形のアルミを丸めて円筒を作る場合にもその接合部位も完璧に密閉する
アルコールは爆発する。気化メタノールと空気の混合気体は、蒸気密度が7〜36%の広範囲で爆発する
火が内部に入り難くずっとリスクの小さなガラス製のアルコールランプでも少量の燃料では使うなとされ、小学校の理科実験での使用も禁止されている。ガラス容器上部にヒビか欠損のあるモノを使用して爆発した出来事を受けてのこと。
考慮するべきは、僅かな間隙からも火は入り込むものだという事と、容器内のアルコール蒸気密度は広い爆発範囲に収まり得る事の二つ
メタノールの性質を知っていれば、アルコールストーブの構造を見ただけで、そんな危険なモノは使えないと思うかも知れない。
Open Chamberは問題無い。密閉されていないので、仮に爆発したところで軽い破裂音がするだけのこと。
問題は、Pressure Chamberにあり、アルコール注入後の状態として爆発する蒸気密度範囲となる可能性は高く、そして、Outlet Holeから火が入り込むと爆発する。着火ポイントはOpen Chamber上部で、Outlet Holeからは離れているものの、それで火は入らないとは言い切れない
爆発すれば、Outlet Holeは小径なので逃げ道にならず、Pressure Chamberのアルコールを押し下げ底部のSlitを通じてOpen Chamberのアルコールを上部開口部から押し出してしまう。ストーブ周辺に、火のついたアルコールを撒き散らかす事になる。しかも明るいところではアルコール燃焼の炎は見えない
では、どう対処すればいい?
ひとつは、この様なリスクのあるアルコールストーブは使わないで、ずっと安全なブタン燃料のクッカーを使う事だ
もうひとつは、既知の方法で、Partitionにカーボンフェルトを巻きつけ、或いは、Pressure Chamberにカーボンフェルトを適度に詰める。この事で、アルコール注入後のPressure Chamberの蒸気密度を高く維持する事や、Outelet Holeから火が入り難くする事が出来る。
この事でOutlet Holeからの噴出が阻害される事は無い。カーボンフェルトは細密なスチールスクラバーで代用する事が出来る
あと、アルコール燃料の燃焼によりホルムアルデヒド(有害物質)が発生するので、室内でテストする時は換気をする事ですね
素材となる飲料缶は、多くがアルミで、一部がスチールである
少し調べたところ、アルミ缶には、3000系もしくは5000系のアルミ合金が使われ、腐食防止のために内側に合成樹脂の皮膜が塗布されている。果汁やビールなどにも耐えられる訳だ。尤も、加工した箇所は合成樹脂の皮膜が無くなるので、アルコール燃料に耐え得るかどうかは少々心配になる。
プルトップとスクリューキャップの飲料缶を比較すると、後者のほうが硬く全体的に肉厚も比較的厚く作られている。ネジ蓋を回す応力に耐える為だろうか。合金の種類も異なるのかも知れない
硬いと言えばスチールだが、これはアルミよりも腐食する可能性が高い。熱にはアルミよりも強く変形し難いのだが、あまり使いたく無い素材だ。あまり加工しないで使えるパーツであればいいかも知れない