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囚人のジレンマの合理的戦略は単純明快なもので、多くの研究者を憂鬱にさせるものでした。
フォーク定理により「協力」がより豊かな世界を創出するキーであることは知られていましたが、それは、実社会では、合目的な条件の下でしか実施される事が無い様に見えます。例えば、大きなシェアや流通を手中に収める為にライバル企業同士が提携する様な場合です
“腐ったリンゴは周りのリンゴも腐らせる”と言われます。これは人間社会の比喩ですが、いつも真実なのでしょうか。そうでは無いのなら、どの様な因子がその結果を左右出来るのでしょうか
アクセル・ロッドの有名なトーナメントにも賛否両論があります。
初期値次第だという批判は決定的なものに思えます。しかしアクセルロッドは先駆者でした。Binmoreはフォーク定理が証明する無数の均衡(equilibrium)の中から特定の均衡を選ぶ事が重要である事を気付かせてくれたと評価しています
ここで紹介するのは、累次的囚人のジレンマのシミュレータです
4 bitsで表現出来る16種類の戦略パターンが軍拡競争をします。これは恣意的に16種類を選んだのではなく、系統抽出された結果としての16種類の戦略パターンです
戦略を決定する為の参照データとして幾つかの観察ルールがあります。
詳しくは後述しますが、相手の選択した過去のカードまたは自身が過去に相手から受けたカード、相手の戦略コードの評価,相手の全ての過去のカードのスタッツ,相手の全ての過去の倫理的振舞いとしての評価スタッツ等を参照(観察)する事が出来ます。これらは観察ルール(observation rule)として選択します。そして、自身の戦略パターンに照応して、協力か裏切かのカードを決定します。
観察ルールは個々の個体のアビリティとしての観察能力と言えるものです
ランダムに相手を選んで(出会って)ゲームをする様に「地理的ルール」を導入しています。ランダムに隣接する相手を探してゲームをします。相手が見つからなかった場合は、ランダムな方向へ移動します。また、双方共に一定以上の生命力を獲得している優勢な個体同士は、交差生殖により子孫を生み出します。
初期段階は、世界リソースが余っているので、ゲームをするだけでボーナスポイントが追加されます。そして子孫を次々に生み出していきます。この初期段階では、偶然が大きな影響を齎します
観察ルールにも依りますが、大抵の場合、どのような均衡が選ばれるか予想は困難です。このようなシステマティックで表層的なシミュレータではちょっとした偶然に大きく翻弄されてしまう様子です。それでも、各個体にどのような能力(観察ルール)を与えれば、どのような均衡が選ばれるのかの傾向は顕れて来ます
ver.0.86より、幾つかの補足的ルールを追加しました。実社会の暗喩となる様な、親和性を基礎にしたルールと社会階層的なルールを想定しています。いずれも選択/解除が可能です。
ひとつは、似た個体同士だけが関る事です。遺伝子の共通ビットのパーセンテージを設定する事で、それ以上の共通性を持つ個体同士のみがゲームまたは生殖を行なう事が出来ます。
もうひとつは、富む個体は貧しい個体を相手にしない事です。生命力の比を設定する事で、それ以上の格差のある個体同士は関りを持てません。但し、設定した比率の範囲で、生命力を多く獲得している個体の戦略(遺伝子)をコピーする事が出来ます。成功した個体を模倣するという事です。特定の比率の範囲に絞るのは、格差が大き過ぎると影響力は却って小さく、模倣する事もあまり無いだろうからです
ver.0.87より、観察ルールをひとつ加えました。相手の戦略コードを評価する事が可能なルールで「Rule-X」としてプリセットしています。いわば相手の本性を見抜く観察能力を附与した訳です。
幾つかの過去のカードを観察するだけでは、その際の相手まで情報として含んでいる訳では無いので、相手の本性を知る事は不可能です。
具体的にはサイン表現ともなっている戦略コードを評価するだけなのですが、ソーシャルシミュレーションとして考えると一種のインスピレーション(霊感)を与えた事になるでしょう
ver.0.88より、観察ルールを更に2つ追加しました。ひとつ(Rule-Y)は、相手が過去に出した全てのカードのスタッツを参照します。もうひとつ(Rule-Z)は、相手が過去に出した全てのカードの倫理的振舞いとしての評価スタッツを参照します。
Rule-Yは、単純にCカードを出した回数とDカードを出した回数を記録しその比率によって評価します。お役所的な記録評価とでも言えるでしょうか。
Rule-Zは、C乃至Dカードを出した際の相手によって倫理的な対応であったか非倫理的な対応であったかの記録から、その回数の比率によって評価します。これを見抜けるというのは、どのような能力の暗喩となるのか悩ましいところですが、さしあたりイントュイション(直観)とします
個体の振舞いとしてどのような能力を与えればどのような均衡を生み出す事が出来るか?――これがシミュレータの主眼であり、豊かな世界を創発する為の各エージェントの能力を知る事です
先ずは動かしてみて下さい