ヴェポライザーとしての評価基準を整理してみる。温度調整等のオペレーション機能や必要な温度範囲などの一定の水準は当然の前提として考える
・温度偏差
・容 量
・汎用性
・掃除の手間
・電力効率
・バッテリー
本当は第一に「味」がある。主観的な基準だが、確実にその善し悪しはあって機器によって全く異なる。
明確に味に差違が出るのは温度帯域で、高温ほど蒸気は多くなり相応の“キック”もあるのだがフレーバーは落ちる。ある程度の低温を保った方が葉本来のフレーバーはよく出てくれる。
次いで味を左右する大きな原因がチャンバー内の温度偏差では無いかと想像している。厳密に言えば詰めたシャグ全体での温度偏差である。少なくとも、味が良く出る出ないの差はこれで決まる。もちろん詰めたシャグの効率の善し悪しに直結する。
傾向として、低温度域でチャンバーの温度偏差を小さくするのは難しい。また、温度偏差の小ささはチャンバーの容量とはトレードオフにある。温度偏差が小さくても容量が小さければ満足出来ないだろう
汎用性は高いほどいい。ドライハーブ用のアトマイザーにも良い製品が出始めてはいる
掃除が簡単か如何かは重大な問題だ。これは構造と素材に依る。
シャグに熱を伝える部位は熱伝導性に優れた素材であり、その様な素材は通常汚れ易く焦げ付き易くもある。そうした部位が堅牢で露出が容易なら掃除は簡単かも知れない。また、対流方式(convection)であれば汚れ難い素材で構成しているかも知れない。
また、どこまで分解出来るかは徹底的なクリーニングの可否に繋がる
電力効率はランタイムを気にしないのであれば問題では無いし、電力容量が大きければ問題になり難い。電力効率は加熱方式と機器構造に依存する。程度の問題ではあるが、使用時にシェルが高温になるのは効率を損なっている結果だ
ヴェポライザーは電源や制御回路,チャンバー,マウスピースなど全てが一体で出来ている製品が多く、バッテリーはビルトインが圧倒的に多数だ。つまり汎用性が低い。そうした機器は全体が消耗品となる。そう考えればバッテリーが汎用品で交換が可能か如何かは問題では無い。それに多くの機器でヒータ部位は恒久的な製品では無い筈だ。
但し、バッテリーの交換が可能であれば、外出時に予備のバッテリーを持ち歩く事も出来る。そういう機器に得体の知れないバッテリー乃至ニセモノを、またメカニカルmodに生セルを使って、発火,爆発といった事故が多発しているので、メーカはユーザに交換させたくないのかもね
充電する事無くACアダプターなどで駆動出来れば尚良い。そう出来ればバッテリーに負担をかける事無く自宅での使用が簡単になる。機器としてそういう仕様にするのは簡単な事なのに、何故かそういう製品は少ない
コンダクションとコンベクションの2方式が有名だが、コンダクションにはインナーヒーティングとアウターヒーティングがあり、大別すると3通りになる。近い将来に登場するだろうインダクション方式も追加すると4通りになる
・インナーコンダクション
・アウターコンダクション
・コンベクション
・インダクション(IH)
コンダクション(conduction heating)は熱伝導方式で、インナーコンダクションはチャンバー内部にヒータがある、もしくはチャンバー自体がヒータであり、シャグを直接的に加熱する。アウターコンダクションはチャンバーの外部にヒータがあり、チャンバーを媒介して加熱する。
インナーコンダクションは熱効率に圧倒的に優れるのだが、ヒータのサイズや設置箇所などに工夫の無い製品が多く、局所的に加熱するだけであったり、加熱では無くシャグを燃焼させてしまったりするものが多い。チャンバーの素材にはステンレスなどの汚れ難く焦げ付きもしない素材を使えるので、一般に掃除は簡単に済むものが多い。但し、ヒータは焦げ付き易いだろうから剥き出しにしてクリーニング出来る事が望ましい。
アウターコンダクションはインナーコンダクションの真逆であり、熱効率は悪いけれどチャンバー内部の温度偏差を小さくし易い。チャンバーの素材はブラスのクロームメッキなどがほとんどで汚れ易く焦げ付き易い
コンベクション(convection heating)は対流方式で、エアフローと構造次第なんだろうと想像はするものの、使った事がないのでわかりません。電熱式では無くガス燃焼式で排気音が煩い製品があったりするらしい
インダクション(induction heating)は、コイルに高周波パルスを流す事で電磁誘導を引き起こし金属を発熱させる事でシャグを加熱する。円筒形のチャンバー自体を発熱させる事も可能だし、発熱させる金属片をシャグに突っ込んでもいい。高効率が期待出来る。また発熱させる金属形状によりチャンバー内部の温度偏差を小さくする事も容易だろう。ヒータは消耗品では無く半永久的に使える。掃除も簡単になる筈だ。
理想的に思える方式だが市販品は極めて稀だ
コンダクション方式には適切となる構造上の特徴がある。細長い円筒形のチャンバーが有利なのだ
アウタータイプでは、熱伝導媒体となるチャンバー全体を外側から加熱するのであれば、細長いほど内部の温度偏差を小さくする事が出来る
インナータイプでは、温度偏差を小さくする為には、更に、細長いチャンバー自体がヒータであるか、もしくは、チャンバー形状に適合した細長いヒータが必要になる。ブレード形状や棒状のヒータを、詰めたシャグに刺し込むものや、ヒータをチャンバー内側に円筒形状に内張りするといったものが優れる。
蛇足だが、円筒の底に剥き出しのコイルやセラミックドーナツヒータが位置するタイプの製品は、加熱も局所的にしかならない。それどころか、大抵は加熱では無く燃焼させてしまう。このタイプは言葉の意味からしてもヴェポライザーとは言えないだろう
コンベクション方式は、熱風がシャグ全体を通過する事に尽きる。構造は一概に良否を決するものではないだろう
インダクション方式は、最も自由度が高いと思うのだが、発熱体となる金属がシャグに刺し込む棒状もしくはシャグを詰める円筒形の形状になる事を考えれば、これも細長い円筒形のチャンバーが有利なのだろう
焦点は、詰めたシャグ全てが発熱部位から近い事ですね
市販品では、Arizer ArGo, Elevi IPRO DR60, Davinci IQ, Boundless CFC, Herbstick Eco,この5機種を所有している。そして、この順に優れていると思う。但し、Elevi IPRO DR60については、純正のmodを使わない限りに於いてだ。
他にも気になる製品は多々あるのだが、自作のヴェポライザーをメインにして更にこれらの機種があると十二分という感じがしてる
但し、シーシャのフレーバーに使える市販品のヴェポライザーは皆無だ。唯一modとatomizerが別個になっているDR60で、少しの工夫で使えそうではあるが(後述)、チャンバー内の液状フレーバーが故障の原因になりはしないか心許ない
Arizer ArGo
ヴェポライザーとしては理想的と言えそうな機種。シーシャに興味が移ってから購入したので放置状態になっている
・喫味が良い
・掃除が簡単
・18650バッテリーは交換可能
発売当時、メーカ直販で送料込みで202$のオフセールとなっていた
manufacture's site : https://arizer.com/argo/
Elevi IPRO DR60
セラミックヒータ使用のインナーコンダクション方式で長所は多く、ハイパワーなイメージが定着している
・チャンバー内の温度偏差がほとんど無い(特筆すべき長所)
・シャグ量に対して蒸気量が多くキックは強い
・汎用性は非常に高く、汎用の“510”modも使え、バッテリーも交換可能
・掃除も簡単でメラニンスポンジ等で新品の様になる
・純正modの制御プログラムは凝っているが失敗作だろう
低温でドライブする事がほとんど不可能で、シャグ本来のフレーバーを引き出すのは難しい。最低温度に設定し、1ヒートを数十秒にして間欠的にヒートアップしても安定的な低温を維持するのは難しい。
これは、純正(付属)modの制御上の欠点であり、別様の“510”modを利用する事で解決する
実際、温度偏差が無い事は、低温でシャグのフレーバーを引き出す最良の条件なのだから
使用する“510”modは、ファイアーボタンだけでは無く、出力を持続的に維持出来るスイッチ乃至モードがある事が望ましい。この辺りはVAPEとは使い方が異なる。制御方式はVV乃至VWとなるが、その方が望みの温度へ持っていくのも容易である。また、低温つまり低出力でドライブする場合は、吸引ペースを少し変える事で温度を変化させる事も簡単になる
Davinci IQ
Davinciシリーズの高級イメージを引き継ぐ製品であるが、特筆する様な欠点も無いが長所も特には無い。可も無く不可も無くといった製品である
・チャンバー内の温度偏差が結構大きく無駄になるシャグが出る
・シャグは多く詰める事が出来るので相応のフレーバーやキックを引き出す事は出来る
・バッテリーは交換可能
・バッテリー容量に対してランタイムが短い
・チャンバー底の掃除がかなり厄介である
値段なりの価値があるのか非常に疑問になる製品であるがテイストはまぁまぁ良い
Boundless CFC
コンパクトでデザインもいい。カフェなどで使っていても目立たない雰囲気
・低温フレーバーから比較的高温でのキックを引き出す事まで守備範囲は広い
・バッテリーは残念ながらビルトインタイプ
・掃除は簡単
・マウスピースが割れてしまう報告が多々ある
オールマイティで何かとバランスの良い製品だと思う。マウスピースのひび割れは耐熱成形材で簡単に修理する事が出来るが、Boundlessの保証は非常に手厚いので、マニュファクチャラーから直接購入してユーザ登録しておくのが無難だろう
Herbstick Eco
値段の割りにはマトモに使える製品で、ヴェポライザーを初めて試してみようという場合にはいいと思う