結局、アップデートしてしまった。800lm/400lmのライトになる。
次章に示すOPアンプとMOSFETで作る定電流回路の実験をやっているうちに作り直したくなってしまったのだ。目的は2つあって、
-- 1つ目は、僅かだがより高効率な回路に置き換える事
-- 2つ目は、400lmと800lmの切り替えを可能にする事
あと、2石の定電流回路に使っているトランジスタは既にディスコンであり、そのストックも残り少なくなってきたなんて事情もある
電流値を決定付ける電圧と抵抗の両方を比較的自由に設定できる事とMOSFETを使える事で、損失の抑制やより高照度化の容易さなどのメリットが生じる
アップデートと言っても回路だけを作り直した訳では無くて、電源部はそのままに、定電流回路とPower LEDを含むヘッド部全体を新たに作ったので、置き換えも戻す事も簡単だ
見た目も以前と変わらない。回路自体は刷新した。次章の回路図と異なるのは、Vrefを設定する回路のうちにモニターランプが無い事ぐらいかな。
照度が異なるので、使用するLEDは異なるし各パラメータ(プログラム)の値なども異なる
因みにdcdcは限界に近い。照度を上げる為にdcdcの出力を上げよう試みると、出力が低下し発振してしまいチップの発熱が酷くなる。そうならない直前の出力に調整した
ここで、後に記したバッテリーモニターも含めて、アップデートの回路図をまとめておく
照度が上がったのは過去の画像と比較すれば明らか。
街灯の無いところでは光の強さも印象的になっている
もう少し下向きにしないと迷惑なライトになりそうだ。左画像の壁面を見ればわかる事に、上方への配光がカットされているのは庇の効果だ
街灯がさほど強くないところでは照射光はそこそこ目立つ(右画像)
街灯が明るいところでは照射光はさほど目立たない(左画像)。
その為には1000lmを超えている必要があるのだろう
800lmでは1時間15分,400lmでは2時間15分。基本的に400lmを使い必要に応じて800lmに切り替える使い方になるかな
400lmでのランタイムはもう少し長い事を期待していたのだが、dcdcの出力をこの構成での限界に近い辺りまで調整した結果だろうと思う。これ以上に出力を上げようとすると、バッテリー残量が十分にあっても発振し始めてしまい、MT3608チップも過熱するので損失も大きくなるだろう
800lmは2本の単二型ニッケル水素充電池(2.4V, 4000mAh)での限界なのだと思う
バッテリーは4000mAhの単二型ニッケル水素充電地2本。
電力が底を尽き電圧が急激に低下すると発振し始める。最初は間欠的な発振だが、そのまま使い続けると発振周期が短くなりとんでもなく迷惑な光害ライトになってしまう。発振し始めた時点で停止すれば、非常に都合の良い事に、適切な終止電圧となる直前の状態で取り出す事が出来る
つまり、過放電でニッケル水素充電池を痛めるまで使ってしまうリスクを避けるのが容易だ
ヘッド部位は簡単に取り替えが可能なので、オプションとしてのヘッド部位を作った。
ケーブル接続もピンコネクタを使ってより簡単に取り替えられるようにしたので、実質ボルト2本を外せばいいだけだ
最初に作ったヘッド部位は下位互換でしかないのでもう使わない。LEDやコリメータ等のパーツが惜しい事もあってバラしたのだが、基板に組み付けた回路パーツは同様の用途にしか使えない。
それらのパーツを流用して、次のように特徴の異なるヘッド部位を作った
-- 電球色のLEDを使用
-- 400lm/150lmと低照度に抑制しロングライド用に長時間のランタイムを狙った
高照度の自転車用ライトは判で押したようにクールホワイトのLEDを使用している。高効率だからそうなっているのだが、それも面白くない。
街灯の明るい道では被視認性さえ確保できればいいので150lmもあれば十分だろう。街灯が無い道でも路面などを視認する為には400lmもあれば事足りる。街乗りに使うにはこっちの方が実際的かもしれない
LEDとコリメータの相性から、今まで製作したものと比較して配光は絞られたものになる。しかしクールホワイトのLEDに比較して眼を射すような眩しさは無い。
モード切替は2灯を個別に行うので実質的に400lm/275lm/150lmの3モードになる
ランタイムは、400lmで2時間20分,150lmで5時間30分。推定だが、275lmなら4時間ぐらいになるかな
残念な事には、ニッケル水素充電池の替え時が訪れてもこの回路は発振しない。発振しない訳じゃないがそうなった時は手遅れでニッケル水素充電池は過放電状態になっている。
そこで、低電圧になるとモニターランプが消灯する回路を組み入れた(後述)
街灯が無くても路面の視認に困る事は無さそうだ
もちろん800lmと比較すればその明るさに劣るので、街灯の無い道が多いコースであれば800lmのヘッド部位を使うほうがいい
街灯の下でも照射光は見る事ができるものの、さほど強い光ではない。
街灯の白色LEDとは色調が異なるので見え易くはあるんだろう
街灯の明るいところでは照射光はあまり目立たない
あくまで街乗りでの被視認用のライトという位置づけになるかな
ニッケル水素充電池は適正な終止電圧で放電を停止しなければならない。それ以上の放電は電池にダメージを与え容量を損なったり充放電自体が不可能になったりする
800lmのヘッド部位を使用する場合には、終止電圧に近づくと発振を始めるので、その時点でバッテリーを交換すれば良い。実に都合の良い現象だった。ある程度の負荷があれば容量限界に近づくと急速にドロップダウンが起こるからだ。
ところが、オプションのヘッド部位の使用では、終止電圧を下回っても発振しない。発振するまで使い続けてしまうと、確実にバッテリーにダメージを与えてしまう。負荷の違いもあるんだろうけれど、回路の違いがこの差を生じている様だ
そこで、バッテリーを監視するシステムを組み入れた。指定の電圧を下回るとモニターランプが消灯する。回路図は次の通り
トランジスタ1つと抵抗2つ。簡単な回路だけれど微調整も可能で信頼性も高い
トランジスタのベース電圧が0.6Vを下回れば消灯する仕組み。微妙な個体差の影響を排除する為にVRは必須。放電器で終止電圧まで下げたバッテリーを使って調整する
一般のバッテリーチェッカーでは容量別に負荷を入れてドロップダウンした電圧を計測する訳だが、このライトの電源部として組み込むので、負荷はライトであって点灯時にバッテリーを監視する
セル個別に監視するにはマルチセルバッテリーモニターというものがあるが、この程度の機器に使うには過分なシステムだ。
もしも2セルのバランスが崩れる事を気にするなら、検出する電圧を少し上げてやってバッテリーを「早めに取り出す」ようにすればいい。そして個別に放電器にかける
理想を言えば、LEDを3〜4個並べてバッテリー消耗に応じて順次消灯していく、もしくはフルカラーLEDを使って色相が変化していく。そんな風に消耗の度合いがわかるモニターが良い。残りの使用時間が推定できれば非常に良い。
というのも、ライトは保安部品として、夜間走行中に使用を中止する訳にはいかないからだ。ロングライドとわかっていれば予備のバッテリーも携帯するが、常にそうする訳にもいかない
右の回路図では、バッテリーの消耗によってLED1から順に消灯していき、終止電圧に達すればLED3も消灯する。ニッケル水素2セルを想定すると、R2, R3は比較的に極めて小さな抵抗値で、R1は比較的ずっと大きく、VRはR2,R3と合計するとR1の50〜60%程度になるものを使う。その合計がR1の33%になる辺りがVRの調整目安になるだろう。LED1, LED2の消灯タイミングは、バッテリー残量のどのレベルをクローズアップするかという事であり、R2, R3の値でフォーカスする。LED1, LED2の消灯時に各々の残りの使用可能時間を推定できるようになるだろう。
面倒くさくてここまでやれませんけれどね(笑)
個人的には、小さいながら100lmのサブライトを着けているので、このニッケル水素充電池を大切にしても街乗りでは問題は無い。
この小さなサブライトとテールランプはバッテリーを共有している。今回作ったライトのバッテリーが別になってしまっているのは気に掛かっていて、単一の強力なバッテリーを用意して共有化する方法を検討してもいた。
でも、一方の使用中止が可能なので、バッテリーが分散・冗長化している事の利点も無くは無いんだなと思った
これを機にサブライトのバッテリーにもモニター回路をつけた
流用するのではなくケーシングから全てを自作してみたい。互換性も保てる様に全く同じ仕様で作る
ヘッド部位は、次章の1000lm超えのライトの為に作ったもので、思いの外に巧く作る事が出来た。これと同じモノを作る。ヘッド部位の形状は全て統一規格で作っている。
試しに800lmの主要回路とLEDが載るパーツを装着してみた
電池ボックスの部位は第一にコンパクトに作りたい。第二に防水性を確保したい。
敢えて1本用の電池ボックスを2つ合わせて、僅かなデッドスペースにスイッチやアタッチメント用のナット等のパーツを埋め込んだ。
超強力な接着剤を使っているのだが、電池ボックスがやや接着しにくい素材なので、アタッチメント類はもちろん全ての接合にボルトを使用した。多分塗料の乗りも悪そうだ
これにカバーを出来れば完璧なのだけれど、今のところ明確な方法は思いつかない。アクリル板や金属板を曲げて取り外しの利くケースとするのか。
意外にこの電源部の方がハードルが高かった。3Dプリンターを買うべきだろうか
防水処理は後回しにして、ケーシングとして使える状態に作りこんだ。取り敢えず、雨天で使うのでなければこれで問題は無い。形状的にHL-300を流用したものとほとんど同じになった。
せめて塗装できればいいのだけれど
昇圧回路をヘッド部位に組み込み、バッテリー容量を監視するモニターランプを付ければ完成だ。既に製作している発光部位を装着して使用する事が出来る
ヘッド部位を後ろから押せば下向きにできる。ヘッド角度の調整が簡単なのは、HL-300流用のライトと同様だ。そして更に、今回のものは発光部位の高さも数センチの範囲で調整できる
バーへ取り付けるベルトはSoubitez AV-828からの流用であるが、M4のナットを仕込んでいるのでボルト使用のものであれば流用できるものは多いだろう。100均のライトのベルトも流用できる
実は同じものを2つ同時進行で作っていた。
モニターランプのキレも良さそうだ